歓迎!P社移転♡「DEAN & DELUCA」

DEAN & DELUCA130年程前、その会社は水道橋の猿楽町にあった。アテネ・フランセに通っていた私は、毎月購入していた情報誌の小さな看板を教室の窓から見つけた。あぁ、こんな場所にあるんだ。小さな会社だなぁ、という感想。その会社は徐々に大きくなって千代田区麹町に移転し、縁あってお世話になった私。1995年に千代田区三番町に移転。上場を果たす。思えば、その間ずっと千代田区に本社があった。興行チケットの販売を手がけているため、チケットの発売初日に大量に発生するコールに充分耐えうる電話網の環境が必要だった。そんな要望に応じたのが、NTT千代田支店であり、九段局だった。ところが、2010年末、創業の地である千代田区を離れ、渋谷に移転するという。

DEAN & DELUCA2やチケット販売はインターネットが主流。発売初日に圧倒的なコールが発生することも少なくなり、予約電話番号も多様化。千代田区に拘る必要もなくなったらしい。20年近くお世話になったOBとしては感慨深く、ちょっと淋しい…と思っていたら、移転先は1年程勤務した会社のすぐ側。会議室の窓から建設中の建物を、そうとは知らずに眺めていた。あぁ、あの大きなビルかぁという感想。これまた因縁。その会社には妻がまだお世話になっている。そして、私が通う自由が丘は渋谷と直結。私の通勤経路も渋谷経由。会社帰りに一緒に食事をして帰宅することが多いお気楽夫婦としては、行動範囲が近くなり便利ということもある。そんな意味では良いニュース。

DEAN & DELUCA3DEAN & DELUCAでデリ買って帰るってパターンも増えるね♬」とDELUCA好きの妻。渋谷東急の東横のれん街にある店は、お気楽夫婦が(正確には私が)良く立ち寄る店。季節毎に、季節の食材を使って、実に美味しそうな料理で美しくディスプレーされたショーケースを眺めるだけで幸せになる。ある日、いつものようにデリを買って帰る私。何しろ個人事業主である私の勤務時間は自由裁量。自宅に帰って仕事をすることも多く、早々に会社を出て、混雑前の電車に乗って帰宅することもできる。暑かった今年の夏は、酷暑の中での通勤を避け自宅で仕事をする日も増えた。そして、会社に出向いた日に買って帰る頻度が高いのがDEAN & DELUCA。

DINNERの日のメニューは、9種類の惣菜の詰め合わせ、無花果のサラダ、ラタトゥイユ、ビーフカツレツなど。冷製のデリは食器に盛付け冷蔵庫にスタンバイ。温製のデリは温めるために電子レンジにスタンバイ。そして妻の帰りを待つ間に、自宅で仕事。この秋に設立したまちづくり会社の業務もなかなか煩雑で、地元との調整がたいへん。とは言え、自分の裁量で仕事を行うことは、曜日や時間に関係なく打合せを行うことがあっても、楽しくやりがいもある。打合せの後にそのまま居酒屋に場所を移し、ディスカッションをすることも多い。公的申請書の〆切前には、深夜まで仕事をすることもある。無報酬で、まちづくり会社を運営する取締役として。

が帰って来る。リアクションが小さい彼女も、DEAN & DELUCAにはビビッドに反応する。「良いねぇ。美味しそう♡でも、主夫のようで、なぁんか、お気楽そうで良いね」お気楽妻に“お気楽”そうに見える私の実態は…。

黒豚味噌の置き土産「九州男児、北へ!」

butabaraカッシュ仲間の1人、鹿児島出身の酒豪、独身男が北へ旅立った。ひと夏の恋に破れた後の逃避行…ではない。勤務する会社で、担当するプロジェクトを前に進めるというミッションを抱え、秋田県横手市に単身赴任。もっとも、同行する家族はいない。週末はスカッシュのレッスンや試合参加に明け暮れる。ある週末、そんなスカッシュ仲間の壮行会を開催した。集まったメンバーは、ご近所の友人夫妻、NYC帰りの友人夫妻(そろそろこの名称も変える必要があるか)、そしてお気楽夫婦の7人。の、予定だったけれどNYC帰りの友人(妻)が残念ながら都合により欠席。6人で向ったのはご近所中華の名店、萬来軒。さっそくビールで乾杯。

yakigyoza餃子食べたぁい!」夏の暑気払いの集いに、やはり急遽参加できなかったNYC帰りの友人(夫)が、熱烈にアピール。熱中症でダウンしてしまい、友人たちの間でブームとなっている萬来軒の焼餃子を食べられなかったことが悔しかったらしい。暑気払いの後、帰宅した奥さまに「焼餃子、すっごい美味しかったの。残念だったねぇ」とか(たぶん)言われたに違いない。彼は負けず嫌いの体育会系ラガーマン。「うん、これは旨い!」待望の絶品焼餃子を頬張り、溜飲を下げた様子。ところで、北に向うスカッシュ仲間、九州男児と言えば、相変わらず淡々と食べ、飲み、言葉少なに転勤先の様子を語る。「寒いよぉ!何て言ったって、カマクラ祭りが有名な街だからね」皆に脅かされつつ、お気楽妻が差し出す包みを受け取る。

kurobutamisoりがとうございます♡」彼が受け取ったのは、ユニクロのヒートテック下着セット。これで寒さ対策も万全?スカッシュ仲間が転勤する先には、スカッシュコートがない。岩手山を擁する奥羽山脈を越え、岩手県の金ヶ崎町にある森山総合公園という場所まで2時間かけて通うしかないらしい。「それでもスカッシュ続けるんだねぇ」「続けたいっすねぇ」迷わぬ返事に驚嘆の声が上がる。2次会は、Bar808へ。九州男児の好物、芋焼酎で再度乾杯。「皆さんにお土産です」そんなタイミングで彼が取り出したのは鹿児島名産「黒豚みそ」。蓋を開けるとニンニクの香りがふわぁと漂う。食欲を誘う“ご飯の友”。これはキュウリに付けて食べても旨そうだ。「あぁ、良いっすね♡」

karamisoっそく世田谷産キュウリを切り並べ、黒豚みそを乗せてぱくり。ん、んまい。焼酎との相性もぴったり。やはり地元の食材には地元の酒という組合せ。スカッシュ仲間が向う秋田といえば酒どころ。美味しい日本酒と、美味しい料理の組合せに出会えそうだ。「酒とか料理だけじゃなく、秋田美人にも出会わなきゃね」誰からともなく声が上がる。秋田は小野小町の出身と言われる色白美人の土地柄。美味しい酒、酒の肴、そして秋田美人の奥さまと過ごせば、寒い冬も乗り越えられるはず。口数は少ないけれど、何事にもじっくり取り組む粘り強い彼の性格は、東北人と共通するものがあるかもしれない。北と南の相性も悪くない。馴染めば良い組合せもあるだろう。

、ウチには美味しい日本酒見つけて送ってね!」体育会系のNYC帰りの友人(夫)がオチを付ける。何年か後に、鹿児島の黒豚みその代わりに、北の美酒と、美味と、そして秋田美人を伴い、帰っておいで!

読むべし!『阪急電車』有川浩

hankyudensya気楽ブログには珍しくストレートなタイトルだ。けれど、ぜひそう言いたい。読んで欲しい。秋の風が吹き始め、読書にはぴったりの季節。おススメだ。何しろ、関西出張の際にせっかく関西にいるのだからとシャレ半分で購入し、姫路のホテルであっと言う間に読み終えた。そして翌日、東京に向う新幹線の車内でもう一度読み直した。飛んでいく車窓の風景に作品の中に登場する街を探しながら。ちなみに、後で調べてみると、作品の舞台となる阪急今津線は、上りの新幹線が新神戸の駅を出るとすぐに潜る、六甲山トンネルの出口からすぐ。一瞬で通り過ぎてしまうから、新幹線からの視認は困難。地図を眺めながら、いつかその街を訪ねてみたいという思いが胸を過る。そんな気持にさせる物語。

急電車』は、一部の書店でベストセラーの上位にいるけれど、まだ知らない人も多いかもしれない。作者は有川浩(ありかわ ひろ)、高知県出身。2004年デビューのまだ若い作家だ。けれど、最初のページを開いた時から読者をぐっと惹きつける力量はなかなかのもの。宝塚駅から西宮北口駅までの8つの駅毎に小さな物語を綴り、西宮北口駅から宝塚駅までの折り返しの路線で、折り返しの物語を繋ぐ。実に巧みな構成。そして、ひとつひとつのエピソードの粒立ちが、実に良い。物語全体を包むほのぼの感、女子高校生からお婆ちゃんまで、ぴりっと魅力的な登場人物たち。片道わずか15分程のローカル線沿いの風景と相まって、柔らかい、けれど甘いだけではないストーリー。そして、登場人物それぞれの物語が絶妙に重なり合い、電車と共に進行していく。

theater川駅で新幹線を降り、大井町で乗り換えて自由が丘へ向う。大井町駅始発、溝ノ口行きの大井町線。発車間際の停車中の電車に乗り込む。最後部の車両にはベビーカーに子供を乗せた3組の親子が。あぁ騒がしそうだと隣の車両に移動する…のが、いつもの私だった。けれど、その日は親子連れのベビーカーの前に座り、3人の母親の会話に耳を峙てた。見た目は、子供を連れていなければ母親とは思えない若い3人の女の子。子供をあやしながら、フツーのOLでも交わしているような話題に、笑い合い、突っ込み合い、子供の様子や周囲の乗客の様子を伺う。騒がしくなってはいないか、子供が泣き出して乗客の視線を集めはしないか。けれど、尽きない話題。束の間、子育てを忘れ“女の子”に戻る。そんな様子が微笑ましく、そんな見方をしてしまう自分が照れくさい。

中駅で降りていってしまった3組の親子連れ。ちょっと残念。再び、手元の『阪急電車』をぱらぱらとめくってみる。お互いにかかわり合わずに、見てみぬ振り。ある意味、それが電車内でのエチケット。けれど、関わってしまった偶然と、小さな物語が転換する度に人称が変わる有川浩の絶妙な筆致は、「そんなことある訳ないじゃん!」といういくつかの偶然を、実に自然に必然と思わせる。複数の主人公たちが出会い、関わり、見られていたり、聞かれていたり。物語にあざとさがなく、設定に破綻がない。続いて読み始めた『シアター!』という小劇場を舞台にした作品もすぐに読了。これまた、上手い。物語は続いているという余韻を残し、続編を期待させてしまうところなどは、『阪急電車』と同様。

川浩、あるだけ全部買ってきたよ!」妻が嬉しそうに何冊もの文庫本を抱えている。余りにも強く薦める私を胡散臭そうに眺めながらも、2冊をすぐに読み終え、あっという間にファンになったらしい。有川浩、お気楽夫婦にとって新刊が楽しみになる作家が1人増えた。

*巧いなぁ♡ さらっと読めて素直に楽しめる1冊です♬

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SINCE 1.May 2005