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1988年、ジャスマックグループというホテルや飲食店を経営する企業が、札幌に「ノアの箱船」という奇抜なデザインの中華料理店を出した。時はバブルの真っ最中。札幌出張の際に地元の方と一緒に訪れ、その奇抜なデザインに驚いた。化石化したノアの箱船をモチーフにした、いかにもバブルの産物。その後、焼肉屋など何度かの業態変更を経て、2011年2月現在は炉端焼きの店らしい。そのデザインを手がけたチームが、博多のホテル「イル・パラッツオ」も担当。同じジャスマックが1998年に北九州市のホテル「門司港ホテル」を開業した。いずれも日本には珍しい非日常的なデザイン先行型のホテル。
門司港ホテルは、門司港駅から歩いて数分。門司港駅近辺に広がるレトロでスタイリッシュなエリア「門司港レトロ」の中心にある。ラブホテル街のまっただ中に建ったホテル・イル・パラッツオも同様だけれど、周囲の風景から際立つ外観とカラーリングが潔い。内部はクラシカルな雰囲気をデザインに活かしたどこを撮っても絵になる内装。旅のわくわく感を最大限に膨らませてくれる。
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1991年開業。みなとみらい21で横浜博覧会(YES’89)が開催されたのは1989年。バブルの真っ最中だった。その跡地で(未来に向けて?)帆を張ったヨットのセールを模したホテルとして話題だった。周囲はまだ殺風景な開発予定地が広がっていた。けれど、直後にバブル崩壊。なのに、1993年に横浜ロイヤル パーク ホテル ニッコー(当時)、1996年にパン パシフィック ホテル横浜が相次いで開業。3ホテルで横浜三銃士と称して連携したキャンペーンを行ったりしていた。
2002年赤レンガパーク完成、2004年みなとみらい線が開通。ようやく観光施設やインフラが整い、街が成熟してきた時に、このホテルの外観は見事に周囲に調和し、(ランドマークタワーと違った意味で)ランドマークとなっている。実に美しい外観。横浜ロイヤルパークホテルは高層階からの眺めが素晴らしいのに対し、このホテルは低層階からの風景に味わいがある。そして室内はオーソドックスな調度。落ち着きがあるが、セクシーさには欠ける。お気楽夫婦にとっては、何か新たなきっかけがあれば再訪したいホテルの位置付けだ。
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グランドハイアット東京は、迷宮の中にある。六本木ヒルズができた当初、混雑する人ごみを掻き分けて、慣れない街の地図を頭に入れながら目的地に向かう楽しみがあった。特にこのホテルの中にあるマデュロというバーの分かり難さと言ったら。それだけに辿り着き、無国籍なバーの異空間に遊ぶ楽しみは格別だ。宿泊した部屋はコンパクトながら機能的。ただし、高層ではないということもあり開放的なビューは望めない。ビルの間から東京タワーを眺めるというある意味都会的な眺望ではある。照明がセクシィなプール、そのプールを見下ろすジム、ビルの谷間の竹林の中にあるレストラン群、そんな演出を楽しみながら使いこなすことができれば、このホテルは実に楽しい。ただ、ヒルズという街自体に人が少なくなってしまった。やはり人が少ない迷宮巡りは淋しい。
*2012年2月、クラブラウンジが新装なったと聞き、再訪。オープン時の雑な接客が改善されて…いなかった。雑というか、目線が高い。西洋系外国人に対するサービスだけが高水準なのかもしれない。たまにしか訪れない客のあしらいは粗い。残念。お気に入りの星をひとつ落とさざるを得ない。
【快楽主義宣言より】
■「Are you happy?」2012年2月11日
■「迷宮の魅力」 2005年5月18日