今年の秋はどこに行こうか?『春夏秋冬』by ヒルクライム

花の丘近、良く口ずさむ曲がある。頭の中をリフレインする曲がある。「なんかこの曲好きなんだよね」そう妻が教えてくれたビデオクリップ。大きなサングラスが小さな鼻からずり落ちそうな、細身の男性ヴォーカル。「今年の春はどこに行こうか?今年の夏はどこに行こうか?」ラップの部分は覚えられないけれど、繰り返す歌詞の部分が妙に耳に残る。「今年の秋はどこに行こうか?今年の冬はどこに行こうか?」見た目と歌詞のギャップに、なんだ?と思いながらMTVなどを視ながら気になって来る。「秋の紅葉も冬の雪も あなたと見たい あなたと居たい」何度も耳にする度、じんわりとして来る。涙もろいのは昔からで、年齢のせいではないと思う。けれど、ヒルクライムの『春夏秋冬』を聴く度に、優しい気持になって来る。

ランチセットる小春日和の週末、「紅葉を観に行こうか?」珍しく妻からの提案。お気楽妻の意向は「〜行かない?」「〜食べない?」という否定疑問形で伝えられることが多い。これは疑問形ではあるが、「〜行こう!」「〜食べよう!」と言う明確な意志。これを取り違えるとややこしいことになる。だから「行こうか?」という肯定疑問形で、それも具体的な提案の形を取った妻の発言には即答する必要がある。うしっ!じゃあサンドイッチでも買って、ご近所散歩に行こう!ところで、高尾山は混んでいるし、井の頭公園だとそのまま吉祥寺で飲みたくなるし、芦花公園はどうかな。「オーケー♪」妻の意思表示は短いほど満足の証。さっそく晩秋ハイキングの準備。ミルクティを温めてポットに入れ、おしぼりと紙ナプキンもスタンバイ。

flor店街を抜け、駅から少し離れた人気のパン屋に向かう。パン工房「FLOR」という可愛い外観の小さな店。ハード系のパンが好みの妻の嗜好とは違うけれど、ご近所パン屋としては合格。安くて美味しい人気店。お昼時の混雑ぶりはすごく、パンが並べられた棚の間に客が行列を作り、後戻りできない一方通行ルール。店の外まで繋がる列に並びながら何種類かのパンを選ぶ。普段だったら並んでまで買おうとは思わないけれど、その日は特別。メインの食事系パンと、甘いデザート系のパンを2種類づつゲット。途中の肉屋で思わず買ってしまった絶品ポテトコロッケを齧りながら、ぽかぽか陽気の街を歩く。「このコロッケは前菜ということで…」自分に言い訳するように呟く妻。アツアツのコロッケは、かりかりほくほく。歩きながら食べるコロッケはしみじみと旨い。

芦花公園んびりと歩いて芦花公園に到着。その昔、徳富蘆花が居を構えたという場所。正式な名称は盧花恒春園。徳富蘆花の旧居、ドッグラン、地元のNPOを中心に丹精された花壇が広がる「花の丘」などがある。トイレもきれいで、きちんと整備された落ち着いた公園。犬を連れた人たちが挨拶を交わし、落葉が積もる広場で子供たちがバドミントンに興じ、ベビーカーの親子連れがお弁当を広げている。全体に人も少ない穴場の公園でもある。お気楽夫婦は花壇を見渡すベンチでちょっと遅めのランチ。冬の柔らかな陽の当たるベンチは幸せ気分。うん、パンもなかなか美味しい。温かなミルクティを飲む。ミルクたっぷりのほっとする味。ふわぁと大きな伸びをする。今年の秋はどこに行こうか?小さく口ずさんでみる。

港のチケット、取れなくて残念だったね」と妻。けれど、それ程残念そうに響かなかったのは温かな陽気のせいだったのか。…今年の冬はどこに行こうか?

コメントする








002147951

SINCE 1.May 2005