美味し国再発見「越後の国(新潟)紀行」

KikkawaShiobiki郷はお隣の新潟県と境を接する小さな街だ。街並の連なりが県境を超え、隣接するお隣の家同士が山形県と新潟県に分れるという珍しい街。食文化も両県の影響を受け、独特のものになっている。例えば塩引き鮭。オスの鮭を塩漬けにし、その後塩を抜いた後、逆さに吊るし乾燥させる保存法。子供の頃、お歳暮にいただいた塩引き鮭を軒に吊るし、お正月を迎えるという風景は日常だった。大晦日の日にお膳に塩引き鮭の切身を盛り付け、元旦に焼いていただく。子供の頃、それが一般的だと思っていたら、新潟県村上市という鮭の食文化が発達した街の特産だったと後に知る。父の三回忌法要の後、村上に「味匠 喜っ川」という鮭加工品販売の老舗を訪ねた。

ArakawakyoEbith面川(みおもてがわ)という鮭の遡上する川を抱く城下町、村上藩の藩士が鮭の回帰性に着目し、増殖事業を行い成功したのが江戸時代。以降250年、鮭の頭から尻尾まで一部たりともムダにしない、100種を超える鮭料理が伝わる鮭の街として知られる。店の奥、町家作りの大きな家の梁に大量の塩引き鮭が吊るされている眺めは壮観。塩引き鮭切身、白子煮、酒びたしなどの鮭のおつまみセットを購入。どれも日本酒に合いそうな逸品。続いて訪れたのは荒川峡にある鷹の巣温泉。荒川に架かる吊り橋を渡り、「四季の郷 喜久屋」という山菜料理がウリの温泉宿に向かう。客室は露天風呂付きの離れ。さっそく作務衣に着替え、峡谷を眺めながら露天風呂で一杯。ふぅ〜っ。

DinnerBreakfast事に同行した妻の慰労を兼ねた温泉滞在、…のはずだったのにパソコンを抱えて旅する妻は、温泉宿でも作務衣姿で仕事に集中する。「良い眺めだし、電話はかかってこないし、仕事がはかどるなぁ」と明るく言われれば、それも良しかと嘆息を付き、地ビールをお代わり。夕餉の山菜尽くしの料理には地元の酒をいただく。米どころとして有名であり、酒どころでもある新潟には蔵本も多い。岩船漁港が近いこともあり、日本海の新鮮な魚介類も豊富だ。先付は山菜盛合せ。八寸に盛られた梅の実は村上の酒「〆張鶴」で 煮てあり、お造りは鯛、鰤と牡丹海老、甘酢漬けはアサツキ、ツクシ、イタドリなどの山菜が再登場。滋味深く美味しい。そして朝食がまた素晴らしい。

SakePonshukan元産の食材を使った料理の数々が美しく並ぶ。ふきのとう味噌、温泉卵、手作りハム、自然薯など目にも舌にも美味しい口福な朝食。中でも釜ごと供された炊きたてのコシヒカリのおいしいこと。普段はご飯を食べない妻も「ご飯お代わりしようかなぁ」と言ってしまう。気持は分ると私も何度目かのお代わり。満足。チェックアウト後、新潟駅に向かう。新幹線に乗り換える前に、行きたい場所があった。そこは新潟県内にある92の酒蔵全ての酒を利き酒ができるという。駅に隣接するホテルメッツ内にある「ぽんしゅ館」だ。越後のお酒ミュージアムを謳うその店は、酒だけではなく、何種類もの味噌、塩、地ビール、お土産などが美しく陳列されている。

わぁ〜っ、凄いね」飲まない妻でも興奮するスペース。けれども、せっかく楽しみにしていたのだけれど、朝ご飯を食べ過ぎ、利き酒は断念。代わりにお土産、車内で楽しむ地ビール、弁当を買い込む。それにしても改めて訪ねてつくづく思う。子供の頃に当たり前だと思っていた豊かさはつくづく貴重だったのだと。新潟は食材豊かな国だ。美味し国、故郷のご近所新潟を再発見する旅となった。

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