伝統食文化と街並み探訪「加賀百万石の矜恃」

Kanazawa01本全国、どこへ行っても画一化された同じような街並み、食文化になりつつある今、金沢を訪ねると嬉しくなってしまう。例えば金沢の観光名所、茶屋街や武家屋敷跡の通りだけではなく、格子戸が街中に目に付く。それも格子の割付けが細かい「木虫籠(きむすこ)」と呼ばれる独特なもの。それが例えば地元料理の飲食店だけではなく、ホテルやオフィスビルの意匠にも使われ、街をあげて金沢らしさを演出している風情。

Kanazawa02気楽夫婦が金沢で訪れた「すし屋 小桜」にも粋な格子戸が。店内も白木の一枚板のカウンターが磨き上げられ、自ら「粋」と書かれた書の額装もあるから、間違いなく(笑)粋な佇まい。2人が予約したのは遅い時間のランチ。早めに到着した所、相次いで先客が精算を始める。どうやら昼は2部制で、客の全員が入れ替えの模様。カウンタ席の6人が揃うと大将が誰にともなく「お嫌いなものはありませんか」と聞く。ん?

Kanazawa03を掛けたのは、どうやら全員に対して。わずか6席だけだから、誰かにという訳でもなく伝わる。すると若い女性2人連れの1人がサビ抜きでと返す。ちなみに、他の席を見渡すと、私(は酒)以外は全員がお茶。隣の若いカップルも含め、全員が観光客であろうに、お茶。うん、確かに妻のように酒を飲めない体質もあるしね。「では、最初に…」と、6人に順番に同じネタを握っていく。そうなのだ。ランチはお任せコースのみ。

Kanazawa04海老、白海老、ブリと、金沢ならではのネタは、どれも唸る旨さ。パパンっと威勢の良い音で握り、ネタを合わせ、煮切りを塗るパフォーマンスと解説付き。そうか、この店は若い観光客向けの、回らない寿司入門の店だ。食べ終え、最後の客となり大将と話をする。しばらくランチは予約で一杯だという。GoTo効果。この料金はお得ですよねと言うと、「厳しいけど、頑張ってます」と大将。涙。次回はオトナの夜の部に。

Kanazawa08沢は美術館の街でもある。すっかり有名になった「金沢21世紀美術館」だけではなく、「石川県立美術館」「石川四高記念文化交流館」など、幅広いジャンルの美術館や博物館が点在する。中でも、都内から移転したばかりの「国立工芸館」や「鈴木大拙館」「加賀本多博物館」などが隣接する出羽町周辺の景色は素晴らしい。紅く燃える樹々、広々とした芝、洋館造りの建物のコントラストが美しく、雨でも楽しい散策だった。

Kanazawa10沢では海鮮以外に何を食べたらいかと、旅行前に転勤経験者に尋ねると、意外なことに「おでん」と返って来た。なるほど、調べてみると人気の店が多く、専門店もある。その中の1軒を訪ねて人気の理由が分かった。あっさりと上品な出汁が、バイ貝、車麩、赤巻、レンコン団子など、金沢ならではのタネに染みている。気軽でお手頃。この味に慣れ親しんだ地元の人々にも、地元の食材を楽しめる観光客にもぴったりだ。

Kanazawa12して金沢の伝統食文化と言えば、料亭でいただく加賀料理。お気楽夫婦が選んだのは、「杉の井 穂濤(ほなみ)」と言う明治末期の数寄屋と書院造りの邸宅を使った由緒ある店。人数に応じて全6室のお座敷で金沢の食文化を味わえる。打水をしたアプローチを通ると、意外なほどにこぢんまりとした玄関。迎えてくれた楚々とした美人若女将にお気楽夫婦が通された部屋は、手入れが行き届いた庭に面した落ち着いた部屋。

Kanazawa13前酒をちょっとだけ舐めた妻は、目にも美味しそうな前菜盛り合わせを味わうと笑顔が零れた。清浄で静謐な空間。ゼータクな時間が流れる。昼の会席料理でも、ゆったりと食事ができる。但し、その日は早めの新幹線に変更。*東京に戻ってすぐに『アラフェス2020』に参加する予定を入れてしまったのだ。何時までに出たいと告げると、「頑張ります」と若女将。申し訳ない。「タクシーも呼んでおきますね」と細やかな気配り。感謝。

Kanazawa14部煮や「蕪蒸し」ならぬ「レンコン蒸し」などの加賀料理をいただき、最後はこの店ならではの逸品、出来立ての「葛切り」をいただき無事に完食。ズワイ蟹の解禁にはわずかに早く、残念ながらいただけなかったが、次の機会にはぜひ!と店先まで若女将に見送られてTAXIで金沢駅に向かう。また訪れたい街は、心残りを敢えて作る。これぞお気楽夫婦の旅の極意。もちろんこの店も夜にぜひ、ゆっくりと(反省)。

「やっぱりいい街だったね」新幹線のシートでお気楽妻が呟く。御意。何度訪れても味わい深く、人が優しく(TAXIの運転手さんが人懐っこく温かい方が多い)、街そのものの佇まいが魅力的。街歩きが愉しく、京都とはまた違った伝統文化、加賀百万石の矜恃を楽しめる。「某国の観光客がいない間に、また来なきゃね」これも御意。「金沢駅前のマンション、買っちゃう?」それは無理(汗)。

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