わが青春の薫ちゃん「赤頭巾ちゃん気をつけて」

dsc同僚が酔って言ったことばに、10代の自分を思い出した。同じ世代なんだなぁと実感した。「東京に出てきて初めて行ったのは、銀座の旭屋書店なんだよね」小説のクライマックス。フンダリケッタリのダメ押しに、小さな女の子が薫くんのゴム長の足を踏んでしまう場面。それが旭屋の前。・・・カナリア色のリボンの小さな女の子のために、『赤頭巾ちゃん』を選んであげる本屋。その他にも、薫くんがゴム長を履いて辿った道を探して歩く、追っかけをやった、のだそうだ。数寄屋橋交差点、ソニービル、三愛、並木通り、電通通り・・・。

そんなことを書いても何のことやらさっぱり分からない人のほうが多いだろう。実は私も世代的にはちょっと年下。でも、その小説はモーレツに売れたのだ。作品名は「赤頭巾ちゃん気をつけて」作者の名前は庄司薫。昭和44年8月に初版。私の持っているは、昭和48年11月に増刷された47版!『赤頭巾・・・』『さよなら怪傑黒頭巾』『白鳥の歌なんか聞こえない』『ぼくの大好きな青髭』の赤・黒・白・青、東西南北の鬼門の色の四部作。全ての主人公が作者と同じ名前、庄司薫くんだった。最後の「青」を書き、いくつかのエッセイを世に出した後、総退却した薫くん。ピアニストの中村紘子さんと結婚した彼は、今は70歳近くのはず!(そんなばかな!という感じ)

高校時代に、同じ“部活”の仲間に、良く本を読む女の子がいた。私が図書館で借りる本のカードには、たいてい彼女の名前があった。その中に薫くんシリーズもあった。卒業後になんとなく手紙のやり取りが続いた。学生のアパートには電話などない時代だった。捉えどころのない焦燥感を持て余し、それを吐き出すように分厚い手紙を書き送った。若気の過ちで、その手紙で彼女を傷つけ、連絡が取れなくなり、時間だけが経った。今だったら、どんなやり取りができたんだろうな。消息の消えた「庄司薫」の名前を本棚に見る度に、そんな気持がよぎる。・・・恥ずかしいぐらい青い、お話。

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