蜃気楼ホテル「フォーシーズンズ・ランカウイ」

P1020432P1020434_1そのホテルは、砂漠の中のオアシスに、突然現れた宮殿のような、中東のリゾートホテル(行ったことはないけど)の趣だった。迷宮のようなエントランスから水辺のサロンまでの小路を辿る。確か我々はマレーシアに来ていたはずだったのに…と、チェックインのために座ったソファに沈むお尻が妙に落ち着かない。イスラム文化に対して余り馴染みがないこともある。微妙な偏見があるのも否定できない。クアラの空港でも大きなスカーフ(トゥドゥン)で頭をすっぽり包んだ、大きな瞳が強調される美しい顔が印象的なエキゾティックな女性の姿に圧倒された。マレーシアはイスラム国家であり、タイとマレーシアとイスラムの融合だというホテルのデザインも納得できなくはない。豪華であり、計算され尽した美しさがある。

P1020454P1020610案内されたパビリオン(一棟に4つの部屋がある二階建てのヴィラ)で荷解きをして、明るい天窓のサニタリールームに化粧品を並べ、大きなクローゼットに衣服を掛け、いかように巣作りをしても、落ち着くまで時間が掛かったのは事実。豪華な室内、ウェルカム・シャンパンや、ダイニングエリアまである広々としたベランダ、91組の客に対して400人というスタッフのきめ細かなサービスも、微妙な距離感がある。

P1020587P1020635なぜだろう?こぢんまりとした隠れ家的なダタイから移ったせいだろうか。自然に任せ、最低限の掃除に留めるダタイの熱帯雨林から、広大な敷地の隅々まで手入れが行き届き、丹精されたフォーシーズンズの植栽の美しさが“作られた”ものとして目に映るからだろうか。ファミリー用のメイン・プール、大人のカップル用のラップ・プール、サービスの行き届いたテニスコートとジム。いずれもフレンドリーで、良く気がつくスタッフが快適さを支えている。スパでのトリートメント、マッサージのレベル、各施設のゆとりや優雅さもダタイ以上の水準。レストランもきちんと美味しかった。なのに、ダタイの包まれるような居心地の良さと解放感を最後まで味わうことができなかった。蜃気楼のような、夢の中のような、現実感のなさ。

なぜなんだろう?お気楽夫婦の求めるリゾートの理想に、都市型ホテルの快適さを持ち込まれたから混乱したのか?だとしたら、それは二人にとって新しいカテゴリ、未知の領域。一時は楽しみにしていたアマン・グループを敢えて避け、バニヤン・ツリーに宿泊していた我々のウィーク・ポイントなのかもしれない。

「やっとここに慣れた頃に帰るって感じだねぇ」妻が呟く。…そうか、まだこのホテルを訪れるには、二人のお気楽度合が足りなかったのかもしれないなぁ。「え~、そんなこと言ったらいつまでも来れないよぉ~。アマンも行くよっ!」…妻は既に充分お気楽度を満たしているらしい。

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