Archive for 2 月 24th, 2013

終着?出発?「ターミナル」

Terminalーミナルがまたひとつなくなってしまう。2013年3月16日、東急東横線が副都心線と相互乗り入れを開始。始発駅であり終着駅だった東横線渋谷駅は地下に移動し、中間駅となってしまう。ターミナル(Terminal)は終点、末端を意味するが、さらに語源を遡ればギリシャ神話のテルミナス(Terminus)に辿り着くらしい。テルミナスは境界を守る神であり、ローマ時代にはテルミヌス(Teruminus)として所有地の境界に標石を立てたという。日本の鉄道は相互乗り入れが多く、欧米に多く見られる頭端式(列車が通り抜けることができない方式)の駅は元々少ない。その数少ないターミナルである東横線渋谷駅が間もなく消えてしまうのだ。

ShibuyaStation方で、語源に関係なく、ハブの役割を持つ巨大な駅をターミナル駅と呼ぶことが多い。多くの鉄道路線やバスなどが乗り入れ、交通結節点となっている駅。総称としての東京駅、渋谷駅、新宿駅、上野駅、品川駅などがそれに当たる。それらの駅は相互乗り入れでどんどん便利になる。そして、駅構内・乗換ルートの案内板や鉄道路線図はさらに複雑になる。デザイナー泣かせ。さらに、ロマンスカーが発着する小田急線新宿駅、北に向う列車が並ぶJR上野駅などに残っているような旅情は失われてしまう。始発駅の東横線渋谷駅が好きだった。仕事で自由が丘に向う日々。毎日小さな旅情と、ちょっとしたワクワク感を抱えて通っていた。

Keikyu20代前半、東横線の下り終着駅が桜木町だった頃、週末の朝早く渋谷駅から電車に乗った。桜木町で電車を降り、小さな橋を渡り、海上保安庁の官舎に向う。古びた宿舎に住んでいたのはアルバイト仲間だった友人。海上保安官となったその友人はスキー仲間であり、山登りのパートナーだった。さらに、毎週末には他の保安官仲間何人かと一緒に購入した小さな中古のディンギーを楽しんだ。ヨットは海上保安学校の必須科目。海上保安庁と大きく記された黄色い救命胴衣を着込んでセーリング。ハーバーに係留するお金がなかったため、友人の親戚が住む野比海岸の砂浜に船を陸置き。古タイヤを4つ並べ船体を載せていた。貧乏ヨット。だからこそ、とても楽しかった。

Miuraる日、京急線に乗って三浦方面に出かけた。訪問先の最寄駅はYRP野比駅。いつの間にか名前は変わっていたけれど、週末に通っていたかつての野比駅。商談が終わり駅に戻る。ランチタイムも終わっており、遅い昼食を取られる店もなさそうだ。温かな日射し、風もない。ふと思いつき、売店で買ったランチボックスを抱えて海に向う。対岸の房総までくっきりと眺められる好天。この辺りかと見当を付けた場所にはもう砂浜もなく、護岸工事を終えた海岸線は公園として整備されていた。ふぅ〜ん。遠く三浦の突端、剣崎が見える。あの辺りまでしか行けなかったなぁ。沖に係留した三浦海岸で海水浴客に疎まれたなぁ。学生時代を終えようとしていた終着の頃、社会人になり始めの出発の頃。この海に遊んだ。懐かしさが溢れる三浦の海だ。

がやってたのは反対側だったからなぁ」かつて、葉山を拠点に友人たちとクルージングしていた妻。2人はまだ出発していなかった。場所が違うだけではなく、同じスポーツでも、レジャーでもない。へんっ。貧乏ヨットも楽しかったさ。桜木町を経由して、三浦の海に続く駅。3月16日、東横線渋谷駅がターミナルではなくなる日。もう一度、今度は妻と一緒に海まで出かけてみようか。

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